矯正歯科の基礎知識

矯正歯科医院の選び方

矯正歯科は、歯科医院によって治療方法が様々に異なり、また方法の違いや歯科医師の技術によって仕上がりの出来にも差が出てくるものです。ここでは、「良い矯正歯科医院を選ぶ方法」について、詳しくご紹介します。

歯科医院に行く前に確認したいこと

患者さんにとって「歯科医院を選ぶ」という作業は、とても重要です。まず最初に、「話を聞いてみたいが、どこの歯科医院に行こうか?」と、相談に行く歯科医院を決める際に確認しておきたいのは、次の2点です。

矯正担当の歯科医師が常駐しているか

まずは、「矯正を専門におこなっている歯科医師がいるかどうか」が重要です。矯正は虫歯治療などの一般歯科とは全く別の治療ですので、矯正を専門におこなっている技術のある歯科医師の治療を受けることをお薦めします。中には、虫歯治療をおこなう傍らごく稀に矯正もおこなっているような歯科医院もありますが、その程度の経験では、十分な矯正治療ができない可能性があります。

また、矯正専門の歯科医師が週に1回だけ来る、というような歯科医院もありますが、これもお薦めできません。歯科医院が場所を貸してアルバイトの先生が来るというケースも多く、特定の曜日しか治療できませんし、アルバイトの先生はいつ辞めてしまわないとも限りません。矯正治療は歯の移動から保定まで何年もかかるものですので、通院しやすく、長期にわたって信頼して診てもらえるということが大切です。

矯正を専門におこなっている「矯正専門医院」で、しかも治療実績などが十分なところであれば安心です。さらに「専門医の資格」を持つような歯科医師であれば、さらに技術力の保証があるので安心といえるでしょう。

矯正専門医の資格とは

希望の治療法をおこなっているか

特別な治療法の希望がある場合には、それをおこなっているかどうか確認する必要があります。たとえば透明な装置を使う「マウスピース矯正」や、歯の裏側に装置を着ける「裏側矯正」などは、どこの歯科医院でもおこなっているわけではありません。
ただし、特定の治療法は必ずしもすべての人に適用できるとは限りませんので、適用できない場合には、別の治療法を含めて検討することが大切です。最初に治療法にこだわりすぎてしまうと、ご自分の歯並びに合った良い治療方法を見逃すことになってしまう場合がありますので、他の治療法も含めて検討されるとよいでしょう。 ホームページには、歯科医師の治療法に関する考え方などが書かれていることもありますので、それらを参考に広く検討して決められるとよいでしょう。ホームページに記載がなくても希望する治療をおこなっていることもありますので、直接歯科医院に問い合わせてみるのもひとつの方法です。

矯正の治療法と装置

「初診相談」で確認したいこと

多くの矯正歯科医院では「初診相談」として、カウンセリングを3,000円~5,000円程度でおこなっています。(無料でおこなっている歯科医院もあります) まずはそれを利用して詳しく話をきいてみましょう。
初診相談(初診カウンセリング)では精密検査をおこないませんので、具体的な診断や正確な治療費について聞くことはできませんが、概要や、だいたいの治療方針についての説明は受けられるはずです。次の点について、きちんと納得いくように説明してくれる歯科医院を選びましょう。

どのような治療方法があるか

どのような治療方法があるか、それぞれのメリットとデメリットは何か、をきちんと説明してくれること。
特定の治療法を掲げている歯科医院の場合、それだけを薦める場合があります。その治療法が合っている患者さんの場合はいいのですが、そうでない場合もあります。複数の治療法を挙げ、それぞれの治療法のメリット・デメリットをきちんと説明してくれる歯科医師を選びましょう。

矯正の治療法と装置

いつ始めて、どのくらいかかるか

治療はだいたい何年くらいかかるか。子供の場合は、いつ治療を開始するのが適切か、の目安を提示してくれること。
特に子供の場合は、治療開始時期はとても大切です。いつ頃開始するのがよいか、なぜその時期だとよいのかをきちんと説明してくれる歯科医師を選びましょう。

矯正の治療開始時期

抜歯か非抜歯か

矯正治療のために抜歯をしなければいけないケースは少なくありません。
あなたの歯並びは、抜歯が必要なのか、不要なのかを聞いておきましょう。もちろん精密検査をしてからでないと確定的な診断はできませんが、だいたいのことは言ってもらえるはずです。
その際に、「どんな歯並びでもすべて非抜歯で治療ができる」という歯科医師は要注意です。軽度のガタガタであれば非抜歯治療は可能ですが、重度の不正咬合を非抜歯で治療すると、口元が突出するなどして顔貌が悪くなることがあります。
それぞれの歯並びによって、抜歯するのがよいのか、非抜歯でも十分な治療ができるのか、は異なりますので、納得いくように説明してくれる歯科医師を選びましょう。

抜歯と非抜歯

治療費はいくらか

正確な治療費は、精密検査後に治療方針を決めてからでないと出せません。
しかし、だいたいいくらくらいか、は教えてもらえるはずです。治療法Aであればどのくらい、治療法Bであればどのくらい、という目安だけでも教えてもらいましょう。
その際注意したいのは、その治療費が総額なのか(トータルフィー制)、それともさらに通院のたびに調整料が必要なのか、ということです。それによって実際にかかる費用は変わってきますので、確認しておきましょう。

総額制と通院ごとの支払制

精密検査をした後で確認したいこと

初診相談を受けた後、「だいたいこの歯科医院にしよう」、と決めて精密検査を受けられることでしょう。
費用の安い初診相談に比べて、精密検査は5万円前後の費用がかかる歯科医院が多いですので、何か所でも受ける、ということはないと思います。
治療を受ける前提で検査をされるとは思いますが、精密検査の結果を元に診断、治療方針の説明を受けて、どうしても納得ができない場合は、そこで治療を受けることは再考すべきかもしれません。
次のような場合に注意しましょう。

治療方針や治療期間を明示してくれるか

精密検査を受けたにも関わらず、治療方針や治療期間を明示できない歯科医院は要注意です。
初診矯正治療のプロであれば、精密検査をきちんと受ければ、どのような治療法で治療し、どのくらいの期間で治るかを明示できるはずです。「とりあえずこの装置でやってみましょう」「動かしてみないと期間はわかりません」というような説明しかできない歯科医師では治療を受けるべきではありません。費用に関しても同様です。

治療結果(治療のゴール)を提示してくれるか

治療結果や抜歯・非抜歯による仕上がりの違いなどを提示できない歯科医院は要注意です。
治療後に歯並びがどのようになるか、サンプルをシミュレーションして見せてくれる歯科医院もありますが、そこまでではなくても治療結果がどのようになるか概要を説明してくれることが大切です。また、抜歯・非抜歯のどちらも選択可能のようなケースでは、抜歯をしたらどのようになる、非抜歯だとどうなる、という違いを説明してくれることが必要です。質問してみても納得できるような答えが返ってこない場合は要注意です。

デメリットについても説明してくれるか

矯正治療や特定の治療法のメリットしか説明せず、デメリットについては触れない歯科医院は要注意です。
矯正治療は歯並びが美しくなるという大きなメリットがありますが、当然メリットだけではありません。
装置を長期間着ける間には、個人差はあっても痛みが出る場合もありますし、虫歯にならないための手入れや、ゴムかけなどの患者さんが協力しなければならない煩わしい作業も必要になります。矯正治療による歯根吸収などのリスクもゼロではありません。(歯根吸収とは、歯を動かすことで歯の根が短くなってしまうことで、ごく稀にですが発生します)
それらのデメリットもきちんと説明したうえで、最善の治療をしますから一緒に頑張っていきましょう、という姿勢の歯科医院が信頼できるといえるでしょう。