診察室に密着取材

子供と大人の歯のトラブル解決ドキュメント

2012年12月12日

大人の虫歯治療密着取材 (3) ~奥歯の虫歯治療~

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Tさんの熊谷歯科医院3回目の診察です。

前回の診断で、「左上5番の奥歯は抜髄しないといけないかもしれない」と言われ、いっそ抜歯して矯正治療を始めようか悩んでいたTさん。

しかし年末の忙しい時期でもあり、すぐには矯正治療を開始できそうもないため、虫歯が進行しないよう、まずいったん治療をすることにしました。

 

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熊谷歯科医院は綺麗にクリスマスの飾りつけがされ、とても心和む雰囲気で迎えてくれます。しかし、歯を削ることが苦手なTさんは、緊張した面持ちで診察台に座りました。


T
さん
:「よろしくお願いします」
熊谷先生(以下Dr):「今日は左上5番の治療ですね。削ってみて神経が保存できるようなら保存します。まずは麻酔をしますね」

治療を行う部分の歯茎にキシロカインという麻酔薬を注射します。

治療1

  (表側から麻酔)                                  (次に裏側から)

まず表から打ち、少し待ってからもう1回裏側から打ちます。このように2段階で打ち、また麻酔が効いてくるまで十分待つことで、痛みのない治療(無痛治療)ができるそうです。

(編集部注:一人の患者さんの治療時間が短い医院では、麻酔が効くまで十分待つことができず、それで痛みが出てしまう場合があるそうです)

Dr:「気分は悪くないですか?」
Tさん:「大丈夫です」

麻酔が効いたのを確認して、虫歯の部分を削ってゆきます。

Dr:「しみませんか?」「しみたら言ってくださいね」と何度も確認してくださいます。

治療2

時間をかけて丁寧に削ります。5番の歯と、隣の6番の歯も同様に削ってゆきます。
削り終わって写真を撮った後、CR(コンポジットレジン:白い樹脂素材)を詰めてゆきます。

まず接着剤を塗った後に、注射器のようなものでペースト状のCRを充填します。
軟らかいCRは青い光を当てると固まりますので、これを何度も繰り返して詰めてゆきます。

治療3

(注射器状の器具でCRを注入します)              (青い光を当てると固まります)


充填が終わると形の修復を行います。
円盤状や棒状の研磨機を使い、時間をかけて丁寧に形を整えます。途中、咬合紙を噛んで、色がついた部分を確認しながら整えます。

治療4

歯と歯の間には帯状のやすり(ストリップス)を使用します。歯のすき間は研磨機が届きませんが、この薄いやすりを使って、細かい部分まで綺麗に仕上げることができます。

Dr:「神経は残して治療をしました。ただ5番の方は結構深いので、しみてきたら神経の治療が必要になるかもしれません。しばらく様子を見てください。この歯は矯正治療の際に抜歯をするかもしれないということでしたので、CRを詰めています」

Tさん:「ありがとうございました。とても綺麗にできていますね」

Dr:「噛んだ感じはどうですか」
Tさん:「はい、全然違和感もないです」

Dr:「次回は前歯の部分を治療しましょう」
Tさん:「はい、ありがとうございました」

●●  取材を終えて  ●●

治療を終えて、感激の面持ちのTさんが感想を話してくれました。

「治療を始めるまでは、歯を削るのは痛いイメージがあって怖かったのですが、全く痛くありませんでした。削る時だけでなく、麻酔の注射も全く痛くなかったんです」

この「全く痛くない」治療には、次の4つの工夫があるそうです。

(1)麻酔薬をひと肌に温めておいて刺激を少なくする。(打つ前にお湯で温めるそうです)
(2)針を刺す場所や針の方向、麻酔薬を入れるスピード等に細心の注意を払って注射をする。
(3)麻酔注射を2段階に分けて打つ
(4)麻酔が効く時間を十分におく(治療時間が長くとる必要があります)


「今回左上の5番と6番の2本の歯を治療して頂きましたが、鏡で見ても自分の歯のようですし、咬み合わせも今までと全く変わりません。昔の歯医者さんは、詰め物を入れると少し違和感があったものですが、熊谷先生はいつもこの違和感が無いんですよ」

「しかも、これだけ時間をかけて丁寧に治療して頂いて、保険内で対応して頂きました。高額の保険外治療費も覚悟していたので、正直うれしいです。矯正治療をする際に抜歯となる可能性もある歯なので、先生が保険内のCRで治療してくださったのだと思いますが、1時間近い治療でこの治療費は、本当に有り難いです。でも、医院としては合わないんじゃないでしょうかね」


保険診療は、治療内容によって点数が決まっているため、時間をかけて丁寧に治療をしても同じ治療費になります。このため通常の保険診療では、一人の患者さんあたりの診療時間を制限せざるを得ない、という実情があります。十分な時間をかけた治療をしたい場合、保険外治療(自費治療)を選ぶ人が多いのはこのためです。

熊谷歯科では、保険治療、自費治療のどちらも対応していますが、保険治療でもこのように丁寧に診療して頂けるのは、本当に素晴らしいと思いました。

投稿者 kanba : 2012年12月12日 12:03 : 2.大人の虫歯治療密着取材

大人の虫歯治療密着取材 (2) ~診断と治療方針の相談~

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Tさんの熊谷歯科医院2回目の診察です。

今日は、前回行った精密検査の結果を元に熊谷先生から診断を伺い、今後の治療方針の相談を行いました。

いつもの診察室ではなく、カウンセリングルームで詳しく説明して頂きます。

まず撮影したレントゲンを手元のディスプレイで見せて頂きます。
1本1本よくわかります。

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続いて、口腔内写真を壁の大きなモニターで見せて頂きます。
クッキリ精密な写真が大画面に映し出され、迫力があります。

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熊谷先生(以下Dr):「残念ながら結構虫歯がありますね。この黒く写っている部分が虫歯です。歯と歯の間に虫歯が多発していて、2006年の初診の時と較べてもだいぶ増えていますね」

Tさん:「そうですか・・・(少しショックのようです) 前の写真と較べると、本当によく分かりますね。数年でこんなに増えてしまったんですか・・」

Dr:「特に25番の歯(左上の5番目)は、神経を抜かないといけないかもしれません」
Tさん:「この歯ですか? 痛みはないんですが、神経まで行っているのですか」

Dr:「レントゲンを見る限り、7割程度の確率で抜髄になると思います」
Tさん:「うーん・・・もっと早く検診に来るべきでした・・・」(かなりショックのご様子)

<上の歯列>

上の歯列

<下の歯列>

下の歯列

レントゲンと口腔内写真から、「虫歯」と診断される歯のリストを出して頂きました。「えっ、こんなに!」と思うほど、実に10本以上の歯が治療が必要な虫歯とのこと。

●下に表にしてみました。(1~2番が前歯で8番は親知らずです)

虫歯の表2

虫歯がどの箇所にあるかも記載されています。下記のような記号で示されています。

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:mesial・・・・近心側(手前側)

:distal・・・・遠心側(奥側)

:facial・・・・唇側(外側)

:palatal・・・・口蓋側(内側)

:occlusal・・・・咬合面(上側)



T
さん
:「左上5番の歯を神経を抜かないといけないのでしたら、いっそ歯を抜いてしまって矯正治療をするという方法もあるでしょうか? 実は以前から矯正を考えていたのですが、抜歯をしないといけないと言われ、それが怖くて躊躇していたんです。でも、どうせ5番の歯の神経を抜くなら、この機会に矯正を始めようか、という気がしてきたのですが」

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Dr:「そうですね・・・Tさんの歯並びは矯正をした方が いいでしょうから、そういう方法もありますね。ただ、一般的に矯正治療の際に抜歯するのは4番の歯(第一小臼歯)ですから、5番の歯でも大丈夫かどうかは矯正の先生に伺った方がいいですね。でも5番でも大丈夫な可能性はあると思います」


T
さん
:「左上以外も、右上、左下、右下ともに4番の歯は虫歯ですから、抜いてしまえば治療する必要がないですよね!」

(※編集部注:通常の矯正治療では、歯を並べるスペースを作るために、上下左右4本の4番の歯を抜歯します。また、矯正治療は一般の歯科医院ではなく、矯正専門の医院で行います)


Dr
:「・・・まあそうですね。でも左上を5番を抜歯するなら、他も5番の方がいいという場合もあるので、よく相談した方がいいですね」

Tさん:「うーん、どうしましょう、悩みますね・・・」

Dr:「矯正の先生にまずは相談してはいかがですか。必要でしたら検査の資料をお貸しします。ただ、矯正をするならプラークコントロールは十分気を付けてくださいね。Tさんは虫歯になるリスクが高いので、矯正装置をつけている間に虫歯になる可能性があります」

clip_image025Tさん:「それは心配ですね。でも、矯正をして歯並びが良くなれば、虫歯になり難くなりますか?」

Dr:「なりますよ。今は歯と歯が“面”で接していますが、歯が綺麗に並べば“点“で接するようにな るので、汚れが付き難くなりますしね」


T
さん
:「わかりました。よく考えます。でも、それ以外の歯は治療が必要ですよね。まずどの歯から治療するのでしょうか」

Dr:「まずは1番(前歯)の間ですね。ただ、この1番にしても他の奥歯にしても、歯と歯の間に虫歯ができていますので、通常は上から削って治療する必要があります。でも矯正治療をするなら、歯の移動中に、歯と歯の間に隙間ができた時に横から治療すれば、虫歯の部分だけを最小限削って治療することもできますよ。その方が歯への負担は少なくなります」

Tさん:「なるほど、それはいいですね」(ますます矯正に心が傾くTさんです)


Tさん:「詰め物は何になりますか」

Dr:「奥歯はきちんと型を取って、インレーを作った方がいいです。レジン(白い樹脂素材)はだんだん擦り減ってきますからね。前歯の間のような小さな部分はCR(コンポジットレジン)でよいですが」

 

取材スタッフ:「写真を見ると、表面に虫歯は見えないのに、中が黒くなっていますが、どこから虫歯になっているのですか?」

Dr:「肉眼では外側は白く見えるのに、中が虫歯というのはよくあります。マイクロクラックといって、ごく僅かの歯の亀裂から虫歯になるのです。あとは、以前に治療した詰め物との隙間からなることも多いですね」

取材スタッフ:「見た目が大丈夫だからと安心できないんですね・・・」

Dr:「虫歯が多い方は、缶コーヒーなどの甘い飲み物が原因であることが多いんですよ。若い方などでも缶コーヒーが習慣になっている方などは虫歯でボロボロになるケースがあり、要注意ですよ」

取材スタッフ:「そうですか・・・」(コーヒー党のスタッフは、ややショック・・)


T
さん
:「矯正をどうするか悩みますが、よく考えてみます」

Dr:「ではまたご連絡くださいね」
Tさん:「はい、ありがとうございました」

 

●●  取材を終えて  ●●

虫歯の治療だけのはずだったのに、思わぬ展開となりました。矯正治療は別の専門の医院で行うので、まずはそちらの先生に相談することになりそうです。今日の熊谷先生のお話をよく考慮して、じっくりと検討して頂きたいと思います。

虫歯に関しては、仕事が忙しくてしばらく検診に来ない間にたくさん虫歯になってしまい、とても後悔していたTさん。「もっと早く来ていれば・・」という後悔先に立たず、ですね。

一見健康そうな歯のTさんの「実は虫歯」を大画面でアップを見せて頂き、取材スタッフもやや衝撃でした。「私も早めに歯医者に行かなければ・・・」と思った今回の取材でした。

投稿者 kanba : 2012年12月12日 11:22 : 2.大人の虫歯治療密着取材

2012年12月11日

大人の虫歯治療密着取材(1)~精密検査~

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本日は鷺ノ宮駅近くの、中杉通り沿いにある熊谷歯科医院に取材にうかがいました。

Tさんが数年前から虫歯治療でお世話になっている先生です。以前の診察では虫歯を1本治療していただきました。そのほかに小さな虫歯があったので定期観察をしましょうという事になったのですが、前回の診察は2010年の10月。2年も間が空いてしまったので口の中がどんな状態になっているか今回は精密な検査をしていただきます。

 

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住宅のような落ち着いた外観で、どなたでも入りやすい雰囲気です。入口には階段の他にスロープがついていて足が不自由な方でも上りやすくなっています。院内は調度品が整えられていて、まるで自宅にいるように寛げる快適な待合室でした。



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熊谷先生(以下Dr)
:「それでは診察をはじめます」熊谷歯科医院には何回か治療にうかがっています。以前の診察から間が空いてしまったので、全ての歯の状態をチェックし直します。



最初に虫歯になっていないか、歯の状態のチェックを行いました。
次に歯周ポケットの深さを調べます。
1本の歯につき、表3か所裏3か所の計6か所チェックを行います。
全ての歯を丁寧にチェックしました。

 

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次にプラークのつき具合、ついている場所のチェック(裏側、表側、歯の間など)です。

Dr「プラークは、下の歯は比較的とれてますが、右上がたまってますね。歯ブラシがちゃんと当たってないんです」



先生の読み上げた歯の状態を歯科衛生士さんが即座にパソコンに入力をしていきます。
歯の状態をすべてパソコンのデータ上で確認できるようになっていました。

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Dr:「歯ブラシがうまく当たってませんね。汚れが残ってしまってます。定期的なクリーニングを受けていないので、虫歯が何本もできてますね」
Tさん:「きちんと磨いていたつもりだったので・・・悔しいです。仕事で定期的なクリーニングにちゃんと来られなかった自分が悪いんです・・・」

このあとレントゲンの撮影を行いました。


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Dr
:「最後に口の中の撮影を行います」

ユニットに寝たまま、先生がカメラで撮影をしていきます。


約1時間の精密な検査が終わり、本日の診察が終了しました。
次回に検査の結果と治療方針をうかがいます。

Tさんはかなり気をつけて歯ブラシで磨いているという事でしたが、歯ブラシだけで虫歯を予防することはできていませんでした。口の中の健康を維持していくのは本当に難しいと実感します。

最近では電動歯ブラシも増えていますが、手で磨く歯磨きも大事ですとのお話でした。
奥の歯はどうしても磨きにくく、しっかりと磨いているつもりでも実際はきちんと歯ブラシがあたっていない事があり、汚れがたまってしまう事が多いようです。

会計時に歯ブラシを購入しました。ご家族の分もあわせてのご購入です。
ご家族みんなで健康な歯を維持するのにむけてがんばるそうです!

●●  取材を終えて  ●●

今回はお口全体の精密検査でしたが、一本一本丁寧な診療で、時間をかけて歯の悪い状態を見逃さないように診察されているのが印象的でした。お口の中の健康は気になるものですが中々うまく管理ができないところです。口の中を健康に保つことで、心も身体もいつまでも健康でいられる様に定期的にメンテナンスを受けていきたいと思います。

歯医者さんはどうしても怖いというイメージを持ってしまいがちですが、本日取材させていただいた医院ではまったく恐怖心の起こらない、リラックスさせてくれる院内でした。安心できる環境でしっかりと治療をしていきたいです。

投稿者 kanba : 2012年12月11日 16:19 : 2.大人の虫歯治療密着取材